MW10 が発売されてから 5 ヶ月が経過し、MW10 を取り扱う病院やメガネ店も少しづつですが確実に増えています。それに伴い試せる場所も増え、夜盲症の方々にとっては少しづつ実態が見えてくるようになったと思います。しかしその一方で一つの問題が見えてきました。それは MW10 を売る側、説明する側、おすすめする側の対応の質です。
MW10 は夜盲症の人のための暗所視支援メガネとしては世界で初めて商用化された製品で、いわば世にも珍しい逸品です。ましてやメガネの内側に超明るい風景が映るエスパーな体質でもあるため、特に極度の弱視の方、おじいちゃんやおばあちゃんに MW10 を説明する時にはだいぶ苦労されていることでしょう。
筆者の前職は IT エンジニアで、デジタルデバイスにも並々ならぬ興味を持っているため、MW10 の仕組みや性能といった中身は短時間で理解しました。筆者からすれば MW10 は何ら特殊な製品ではなく、よくあるカメラの応用製品の一つでしかありません。
しかし、デジタルデバイスにあまり慣れていない、詳しくない人たちだと、出展イベントやメガネ店で説明を聞いたり、短時間の体験だけではなかなか理解できない場合が多く、しかも MW10 を必要としている方というのは夜盲や網膜色素変性症等の疾患の病状が相当進んでいる方が大半ですので、そういう方だと MW10 を紹介・説明する側の人から MW10 での見え方や感想などを質問されても、どう答えて良いのか分からずに口ごもることもよくあります。
例えば、筆者だと単に「ここ」と指差しされても「ここ」が何を指しているのか見えずに口ごもる場合があります。筆者ですらこのような反応をすることもあるので、高齢者や私よりもっと見えづらいという方だと、説明されることの全てが理解出来ないことも考えられます。
本稿でお伝えしたいことは説明する側の人たちには適性が求められること、そして MW10 の客層には偏りがあってそれに応じた対応の仕方が必要ということです。
例えば、一度の説明で理解しない人に対してすぐにイライラしてしまうような性格の方だと MW10 を説明する人としては適性に欠くと言わざるを得ません。
なぜ筆者が人の性格的な事柄について本稿で敢えて触れているのかというと、MW10 の販売を最大化する妨げになり得るからです。
筆者もそうですが、目や目のための事柄で威圧されていると感じると急に萎縮してしまいます。そしてその場を早く去りたい気分になり、MW10 の体験どころではありません。そうなることを避けたいのです。せっかく MW10 を体験しているので MW10 の素晴らしさを十分に実感して帰って欲しいじゃないですか。筆者は、被験者の多くがそのように感じることは MW10 の普及に寄与すると考えており、このような理由で説明する側に適性が求められると考えています。
例えば、被験者が周囲の状況を把握するまで気長に待てる人、同じ説明を何度でもできる方は適性に足りると言えます。
とはいえ、最もお客に接しているメガネ店の方たちというのは基本紳士なので、大多数の方は適性に足りると思います。それでも人が増えればトラブルも増えるので注意が必要です。
もう一つ重要な説明の仕方について、「あっち」や「こっち」という見えている人用の表現は使わずに、「あなたから見て 10 時の方向」や「東/西/南/北」といった直感的にわかる表現を使う、高齢者だと「ディスプレイ」というフレーズを知らない場合もあるでしょうから、「目の前のテレビみたいな画面」といったなるべく日本語の単語で説明する。こうした部分を意識するだけでも被験者の理解が改善され、結果的に体験の満足度も向上することでしょう。
本稿で述べた内容は完全に筆者の主観に基づく意見でしかありませんので、一つの読み物として活用してくだされば幸いです。